最近の読み物


 トゥインクル・ボーイ 乃南アサ著 新潮文庫


純粋がゆえに、正常から異常へと足を踏み出してしまった子供達の、危うい心理を描いた短編集。


正常と異常の境目ってどこなんだろう?
この物語を読んでいると、ふとそんな疑問が浮かびます。
子供の頃の純粋なまでの残酷さは、誰でも多少は身に覚えがあるものだと思うけど、いつそこから卒業して、そして卒業できない子供達は何が違うのか・・・
身近に幼い甥っ子のいる私としても、決して他人事じゃないなーと思いつつ、とりあえず甥っ子と一緒に、無邪気にめいっぱい遊んでこようと思いました(笑)



 氷の森 大沢在昌著 講談社文庫


私立探偵緒方の元に年末に舞い込んだ依頼は、ある少女の捜索。
彼女と共にいると見られる男の父親との接触の後、無事少女は戻ってきたが、事件はそこで終わらなかった。
一方、何かを決意したかのように、ある一人の女性の生前の調査を求める男性。
探し出した少女は再び失踪し、女性の足取り調査と同時に少女の捜索も再開する緒方。
事件の陰には、ある冷酷の男の姿が見え隠れするのだが・・・
大沢氏の原点ともなる、ハードボイルド・ミステリー。


これぞ、純・ハードボイルドなんでしょうね〜
スピード感と緊迫感、謎が謎を呼ぶミステリーに最後にあっと言わせる結末。
大沢氏の作品をそこまで読んでいるわけではない私ですが、原点と言う言葉がぴったり来る感じの、様々な要素を含んだ意欲作だな〜という感じがします。
ここのところよくハードボイルドを読んでいるので、まったくもって裏の世界を知らない私も何やら知った気になってるわけですが、実際にこんな世界もあるもんなんですかねぇ。
どこの世界に生きていても、どこかに一本筋が通っている人間はカッコいいねと感じる作品でもありました。



 Close to You 柴田よしき著 文春文庫


会社内での抗争に負け、逃げるように会社を辞めた雄大
酒におぼれるだらしない生活の帰り道、追い討ちをかけるようにオヤジ狩りにあってしまう。
絶望と混乱の中、互いの仕事を尊重し、必要以上に干渉しあわずに共に生活してきた妻の鮎美が口にした言葉は「専業主夫になって」という一言だった。
自分の身の振り方に悩みつつも、とりあえずは地に足の着いた生活をしようと、今までまったく関わってこなかったマンションの人々との交流をしながら、未来への道を模索し始める雄大
慣れない生活に四苦八苦しながら何とかこなしていく雄大であったが、そんな時、雄大の周りやマンション内で様々な事件が起こり始める。
事件の背景には、どうやら自分達夫婦が関係している事を薄々感じ始めた雄大・・・そしてついには、妻・鮎美が誘拐されてしまう。
何が犯人をそこまで憎悪させたのか・・・知らず知らずのうちに恨みをかってしまった二人の先に待つ結末とは?


先日、ちょっとこれに関わる愚痴と言うか独白を書いたのですが、やっぱ一番痛かったのが「些細な事で深く憎悪される」って辺り。
人と人とで作る社会において、無関心は一つの罪であるというのを改めて思い知りました。
やっぱり、人は誰にも関わらずに生きていく事は出来ないし、あるところに暮らしている以上、そこで生きている責任は果たさなきゃいけないわけで。
うちの両親達からしてほとんど人との付き合いのない人々で、そういう環境で育ってきた私は、なかなか積極的に人間関係を築こうという風にできないんだけど(もちろん性格も大いに関係してるけど)、でも周りの皆の大切さはものすごーく実感してるんだよね。
・・・・・善処します。



 回廊亭殺人事件 東野圭吾著 光文社文庫


ある資産家の死後に、遺産相続に関わる遺言状の公開のために集まった家族達。
そこに招かれた資産家の知人の老婦人・菊代・・・彼女の真の目的は、半年前の心中事件の真実を知る事だった。
事件の生き残りである彼女は、老婆に身を扮してまで、犯人がいると思われるこの回廊亭に乗り込んできたのである。
犯人を釣る餌も用意し、緊張の一夜を明かした彼女は、翌朝ある女性が殺されたという事実を知る。
知りたかった真実のカケラをそこに見出し、更なる推理を進めていく彼女。
自分の身を省みずに一つの真実を追い求め、そして真実を見出した彼女は、何を想うのだろうか・・・


単なる事件モノとして読むより、主人公の女性の心理に迫りながら読むのがいいかも。
一つの事件に隠された切ない想いと、ある意味残酷な真実・・・東野氏の登場人物や明かされる真実には、心に揺さぶりをかけられる事が多いです。
事件の方も、なるほどそう持ってきたか〜というさらっとした驚きがあり、いつものように一気に読みきった作品。
東野氏の小説の読了率は90%をやっと越えたかな?100%まであと一息、頑張ります〜