最近の読み物


 半落ち 横山秀夫著 講談社文庫


妻を殺したと自供してきた現役警察官。
動機と犯行経過を素直に語るものの、犯行後から自首までの空白については頑として語ろうとしない彼に、様々な人物がアプローチをかける。
彼の空白の時間に隠された真実とは?


買ったとき、そして今も、書店の店頭で平積みにされているのを見る、結構宣伝されてるっぽい作品。
どこかの雑誌で、小説部門の週間ベスト1を取ったと見たし、話の内容的にも好みだったし、結構期待して読んだのですが・・・・個人的にはちょっと肩透かし食らった感じ。
明かされる真実という部分では、確かに感じるものはありましたが、全体的に内容が薄いなーという印象を受けたかな。
この作品、六章に分かれていて、各章別の人物の視点から、この彼の秘めた謎に迫るというスタイルなのですが、どうもその各人の背景の描写に重点が行って、彼の謎に近づくような気配がほとんどない章もあり。
で、これだけ引っ張った割には、何と言うかあっさりとした謎だなーっていうのが正直な感想でした。
これくらいの題材は、短編でさらっとまとめる方が私の好みかな〜
まあ、私は「謎」という部分に執着を持つタイプで、その他はある意味おまけ的に見てしまうから、どこに重点を置くかという好みの問題もあるんだろうけどね。
もしかしたら、内容云々よりも「日本中が震えた」とかいう大げさな帯がいかんのかもしれん・・・
そんな騒がれる作品ではなく、静かに穏やかに感じ入るタイプの作品かな〜という印象でした。



 心では重すぎる 上下 大沢在昌著 文春文庫


薬物更生施設で働く傍ら、昔の仕事である探偵業を細々と続けている佐久間は、ある人物に依頼されて漫画家の失踪事件を捜査することになる。
その捜査と平行して、施設の少年の周辺も洗っていた彼であったが、単純にすむと思われた二つの調査は、予想外に大きな謎を垣間見せ始めた。
ある一つの自己啓発セミナー、そしてある少女を通じて二つの調査の糸がつながり始めた時、その奥に隠された真実が浮かび上がってきて・・・
自らの身を投げ出すかのように探偵業にのめり込む佐久間の心の葛藤と、現代の闇を描いた巨編。


上下二冊合わせて1000P近くになる、なかなかの長編作品でしたが、読むときはほぼ一気です。
この作品は、独白に似たぶつ切りの(と私は感じてしまう)表現が少し馴染めなくて、実は物語に入るのに多少努力が必要だったりしたのですが、それでもこの本の魅力はひしひしと感じます。
独白っぽく感じる描写は、たぶん作者が自分自身をかなり投影しているためだろうなーという印象を読んでるときも受けたけど、解説によるとやはりそうのようで。
この主人公に入れない人には少し読みづらい作品だろうけど、とことんまで突き詰められた一人の思考というは、なかなかすごいです。まあ、タイトルどおり「重い」んだけどね。
それにしても、こういうハードボイルド系の作品の、息もつかせぬ展開ってのは、毎回読むたびすごいなーと思います。
この作品でも、二つの調査が交錯しながら徐々に形作っていく真実を、感心しながら見てました。
唯一つ、この作品の一つのキーとなる少女の描写というか人物像が、ちょっとあいまいな、唐突な感じを受けたかな。
その辺は、大沢氏の感じるいわゆる「今どきの若者」と、私の感じている「若者」の像がずれているせいかもしれません。
作品自体は5年ほど前のものなので、私もたぶんその大沢氏の「若者」カテゴリーに入っていたんだろうしね。
それでも、今の私から見た下世代(高校生以下)も、もはやギャップを感じる存在なわけで、そういうのは日々すごいスピードで移り変わっていくものなんだろうね・・・・
ちなみにこれは、過去に何作かあるシリーズ物らしいので、そっちも機会があれば読んでみたいと思います〜


残りは、とりあえず題名のみ載せておいて、ちょっとずつまた感想を書いていこうかなと。
だいぶ、溜まってた未読本が消化されてきた気がする(笑)


 氷の森 大沢在昌著 講談社文庫

 トゥインクル・ボーイ 乃南アサ著 新潮文庫

 死んでも忘れない 乃南アサ著 新潮文庫

 神の二つの貌 貫井徳郎著 文春文庫

 Close to You 柴田よしき著 文春文庫

 回廊亭殺人事件 東野圭吾著 光文社文庫