本日の読み物

 改定完全版 異邦の騎士 講談社文庫 島田荘司

ふと目が覚めた公園のベンチの上、ごく当たり前の日常に戻ろうと思った時にぽっかり空いた自らの記憶に気付いた・・・・なぜだ?何も思い出せない!!
焦る彼が偶然に知り合った一人の女性。やがて彼女との暮らしが彼のすべてとなっていく。
―過去の記憶など無くてもいい、彼女との今の平穏な生活がありさえすれば生きていける―
昔の自分に妻子がいたのかもしれないという不安を感じながらも、そう思い始めた彼であったが、運命は容赦なく彼を過去の記憶へと誘っていくのである。
訪れた過去の住まい、亡くなった妻子といなくなった男、古い廃屋に残された一冊のノート・・・
最悪の事態を頭に浮かべながら、何かに操られるかのように自分の過去に引き寄せられていく彼が選んだ道とは?そして真実は?


島田荘司さんの小説は、「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」以来で、かなり久々です。
以前の二作と今回の作品を読んで、スケール大きいミステリーだな〜という印象が一番強いかな?
あとがきを読むと、この作品が占星術より前に書かれた作者第一作というのがわかりますが、内容も全体的に初期のエネルギー溢れる感じがすごい伝わってきました。
まあ、改訂を何度かしているようなので、どこまで初期の雰囲気が残っているのかはわからないけど。
実は予想していた内容とかなりのズレがあったのですが、いい意味で裏切られたかな?
途中まで、どの辺に御手洗の活躍の場が??と思いながら読みつつ、きっとこの辺の記述にも何らかの意味を込めているんだろうなあと穿った見方もしたりして、最後辺りでなるほどそう来たかーと。
物語全体に漂う切迫感や切なさの一方で御手洗潔の変人ぶりが強烈な印象で、それらが面白い具合にミックスされているあたりなんかは結構好きだったな〜
でも、実は島田さんの作品で読んだのは5冊も無い程度で、前の二作もトリックくらいしか覚えてないので、これまた機会をみて別作品なども読んでみようかなあと思ってます。